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●極めて当たり前の生き方に疑問を感じていた頃、ワーキングホリデーを知り、気がつけばシドニー空港をウロウロしていた
私のワーキングホリデーを一口で表すならば、「元祖ワーキングホリデー柔道」となるだろう。当時の私は、柔道整復養成専門学校を卒業し、3年間の勤務を経て接骨院を開業する準備をしていた。しかし、極めて当たり前のプロセスに、疑問を感じていた頃にワーキングホリデー制度を知り、気がつけばシドニー空港をウロウロしていた。
知り合った日本人にシドニー大学のラボラトリーでの英語学習を勧められたのがきっかけで、同大学に立派な柔道場があることを知り、今までどちらかといえば仕方なくさせられていた柔道が自分を売り込む最たるものであることを知った。また、その当時シドニーには日本人の柔道関係者が皆無だったことも幸いし、どこへ行っても大事にしていただいた。
●豪州チャンピオンのウォレンに出会ったことが私のワーキングホリデーの方向を決定づけた
その中で、この年に65kg級の豪州チャンピオンになったウォレンに出会ったことが私のワーキングホリデーの方向を決定づけた。陽気なオージーで体格も似ていて、スパーリングパートナーのように我々は週に4回の稽古に励んだ。仕事の情報も何度となくもらったが、柔道が続けられなくなる可能性が高かったためほとんどしなかった。
帰国後の仕事が決まっていた私は、この国でJUDOを勉強し、いつかは自分のクラブを持ちたいと思うようになった。日本にいて国内だけの柔道経験では何の実績も持たない無名の私はクラブ設立なんて考えたこともなかっただろう。日豪柔道の架け橋を目指すことは、仕事には直接繋がらないが私にとって大きなキャリア形成と言えた。
●練習が終わった後、パブでの一杯のビールは魔法の水であった
3ヶ月間ほどたって練習を一時中断し、暫くの間、クィーンズランド州をヒッチハイクで旅した。ユースホステルに宿泊し、多くの人と一期一会の時間をすごした日々。これはこれで、同じワーキングホリデー・メーカーの情報交換や人生観のやり取りとして価値があった。
シドニーに戻りウォレンの家に顔を出すと、キャンベラからルイスというスペイン移民の強い柔道家が出稽古に来ていた。私やウォレンは相手にならず、78kg級のチャンピオンながら無差別でも豪州3位となかなかの猛者だ。彼の帰省に合わせて、私もキャンベラへ行くことになった。ここでも柔道が役立ったのは言うまでもない。お金も土産も持たない薄汚れた私が、彼らに大切にされた唯一の理由は古ぼけた柔道着を持っていたからである。3ヵ所のクラブをたらい回しにされ、ボロ雑巾のごとく使われたが、終わった後のパブでの一杯は魔法の水であった。
この国では「好きなだけ泊まって行け」と多くの人に言われたが、一応普通の日本人として育った私には、その言葉を鵜呑みにはできる神経はもたない。12月も半ばとなり、残念だが帰国することになった。10人以上のオージーたちが見送りにきてくれた。
●帰国後、ウォレンもルイスも日本に柔道をするために来た。そして、2人ともオリンピック出場権を手にした。
帰国後、4月から仕事を始めたが、6月にウォレンが来た。そして、暫くしてルイスもヨーロッパ経由でやってきた。2人はオリンピック出場を目指して警察学校や母校の柔道部で猛練習をした。そのころ、中学校の体育館を借りて、柔道教室を始めた。オージーの2人がコマーシャルとなり、すぐに30人ほどの子どもたちが集まった。翌年、ウォレンとルイスは世界選手権に出場して、ベストエイトに残り、2人ともオリンピック出場権を手にした。
●柔道クラブの子供たちと一緒にオーストラリアで交流練習と学校訪問を行った
その後、私は柔道クラブの子供たち約20人と一緒にオーストラリアへ3週間ホームステイをしながら交流練習と学校訪問を行った。柔道交流は、今までに6回行っている。ワーキングホリデーから帰国して、今まで約100人のオージーやニュージーランドの柔道家が我が家に来ている。全員焼きそばが大好きで、経済的には助かった。
●ワーキングホリデーに魅せられて渡航しなかったならば、すべて存在しなかった話である
ワーキングホリデー制度に魅せられて渡航しなかったならば、すべて存在しなかった話である。日本にいただけでは柔道の本当の魅力にも気づかないからクラブ設立なんてあり得なかった。もちろん私が英会話をするなんて、絶対になかっただろう。私のワーキングホリデーは、まだまだこれからである。引き続き微力ではあるが、日豪柔道の架け橋として活動していくだろう。それは人生のテーマとなりつつある。
笠原さんは、「スポーツ国際交流のススメ」や「流星物語」、「卒業旅行」などの本の著者でもあります。オーストラリアで柔道をしたい方がいましたら、笠原さんへ連絡してみてください。きっと良いアドバイスがもらえるはずです。
Eメール:Gta1139@aol.com
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