翌日、指定された時間に電話をかけるが、話の内容がまったく理解できない。話し相手の顔が見えない耳と口だけの機械にムカツキを覚え受話器を置き、小道具とチョンマゲを持って外に出た。
劇場の中に入ると、昨日会った女性とボスが立ち話をしている。これはチャンスだと思い。彼の前にスーっと進み、ニコっと笑いながら名刺と自己紹介文を持って立つ。
「Hello . How do you do?…」
ボスが自分の名刺と自己紹介文を読んでいる。しかし、これではまだインパクトが弱い。バッグからチョンマゲを取り出すと、身振り手振りで売込みを開始。この攻撃にはボスも参ったとみえて、腹を抱えて笑いだした。ここまでくればこちらのもの。あとはいい加減な英語とハッタリ半分で話しまくった。
チョンマゲをつけての売り込みが良かったのか、ボスに気に入られ、翌日通訳を介して話し合うことが決まった。
次の日、3人が1つのテーブルを囲むような形で座り、明るい雰囲気の中で話し合いが進んだ。自分は当初、日本でいう見習いをやりながら英語とコメディーをやれればいいと考えていた。しかし、通訳の方から出た言葉はその予想とは全く違うものだった。「お前は個性的でおもしろい。ボスも大変気に入っている。テレビ局にも知り合いがいるから売り込むつもりらしい。それで、さっそくなんだが、1週間後、時間をあげるからステージの上で何かやってくれないか、とボスが言っているがどうだ?」と通訳の人が言った。
自分は売り込むことばかり一生懸命で後のことは何も考えてなかった。しかし、ここまで言われて引き下がるわけにはいかず。「Yes」と答えた。